次の日
○1年C組教室、休み時間
美月「清華は何か部活入る?」
清華「今のところ入らないかなぁ。美月はマネージャーだっけ?」
美月「うん!サッカー部のマネージャー希望!来週から仮入部してみるんだぁ」
清華「そっか。焼けそうだから日焼け対策しっかりしなきゃだね」
美月「だよねー!」

○放課後
清華が家の最寄駅から歩いて帰っている途中。
ガラの悪い私服姿の男3人組が清華の前に現れ、行手を阻む。
清華(え…)
大学生「ねぇ、あんた吾郷の妹?」
清華(お兄の友達?…じゃなそうな雰囲気)
「そうですけど…」
大学生「妹、意外と可愛いじゃん。オレらね、あんたの兄貴に色々借りがあってさ」
清華(あのバカ兄…。喧嘩するなら家族に迷惑かけないでよね。…もぉー、因縁だけ置いて、本人は呑気に居ないとかなんなの!)
「借りなら本人に返してください」びびっていない様子。
大学生「さすが吾郷の妹、強気だねー。でも所詮、女だもんなぁ。喧嘩するのもあれだし…そうだ、ヤらせてよ。身体で兄貴の借りをさ…」
ニヤつきながら清華に近づき、身体を触ろうとする。清華はパシッとその手を払う。
清華「気安く触らないでください」
大学生「あはは、ウケるんだけど。オレら相手に逃げれると思ってんの?」
残りの2人が清華の二の腕あたりを掴もうとする。
次の瞬間、掴もうとした大学生2人が隼人に殴られ、蹴飛ばされる。顔は見えない速さ。
清華(え…)
隼人「俺の清華に触ろうとすんなよ」横顔
大学生に向かって言う。驚く清華。
清華(なんでここに…)
大学生「お前なんだよ、いきなり!」
蹴飛ばされていない1人が隼人に殴りかかろうとする。
ばっ、拳を手で止め、勢いよく腹あたりを蹴る。地面に尻もちをついた大学生の胸ぐらを掴み、身体を持ち上げる。
隼人「なに、死にたいの?」冷たい目をしている。ゾクっとする清華。
青ざめる大学生たちは、そのまま走り去って行く。
突然のことに呆然とする清華。
隼人「大丈夫?」
清華「あ、はい。ありがとうございました。えっと…」
(そういえば、まだ名前知らない)
「すみません、名前教えてもらってもいいですか?」
隼人「久城隼人」
清華(くじょうはやと…。やっぱり聞いた覚えがない)
隼人「危ないからさ、明日から一緒に下校ね。家まで送るから」
清華(!?)
「いえ、結構です!今日はたまたまだったし、また迷惑をかけるわけには…」
隼人「勇清さんを慕ってる人はたくさんいる。けど、その人望を妬んでるやつや喧嘩に負けて恨んでるやつも結構いるんだよ。多分また同じようなことが起こると思う」
清華(お兄はどんな生活してたのよ…)
隼人「それにさ、迷惑とか考えるのやめて。自分の婚約者を助けたり、守ったりすんのは当たり前だから」
清華(婚約者…)
「あの、本当に私のこと…好きなんですか?」
少し恥ずかしそうに聞く。
スッと清華の目の前に来る。清華の髪を指数本で軽くすくい上げる。
隼人「好き過ぎて…身体も、肌も、髪の毛1本さえも、誰にも触れさせたくないんだけど」
じっと見つめられ、ドキッとする清華。

○夜、清華の部屋
兄に電話をかけている。
清華「もしもし」
勇清「もしもーし。もう俺のことが恋しくなったか!」
清華「違うから。そんなことはどうでもいいの!あのさっ、どういうこと!?」
勇清「え?何がだよ」
清華「何がじゃないから!久城隼人って人!なんかいきなり婚約者とか訳のわかんないこと言い出して…」
勇清「隼人にもう会えたのか、よかったよかった。なかなかのイケメンだろ?」
清華「いや、イケメンとかどうでもいいから!」
勇清「あいつやる気なさそうな雰囲気出してるけど、ケンカむちゃくちゃ強いんだよ!だから安心して清華のこと任せられるわけよ」
清華「ケンカ強いのは知ってる…。任せる意味が分かんないし、そもそも婚約者って…」
勇清「隼人に清華と結婚したいって言われたから、いいよって許可したんだよ。俺の認めた男以外と結婚なんかさせたくねーし」
清華「はぁ!?何勝手に人の結婚相手決めてんのよ!私にだって選ぶ権利あるし!!」
勇清「隼人の何がダメなんだよ。かっこいいし、強いし、俺より頭良いし、あー見えて優しいし、拒否する理由あるか?」
清華(お兄まで感覚がやばい…)
「あのさ、その人が良い人とか悪い人とかじゃなくて、恋愛感情があるか、好きかどうかでしょ?」
勇清「え、もしかして清華、彼氏出来たのか!?」
清華「いや、いないけど…」
勇清「なら問題ねーじゃん!隼人に清華の連絡先教えてるから、また連絡あると思うわ。つーか、兄ちゃん仕事で疲れて眠いからもう寝るな!声聞けて良かった。おやすみ!」
清華「えっ、ちょっ…」
プツッ…
清華(連絡先まで…どこまで勝手してるのよー)怒りと呆れ
「高校生で婚約者って…何それ」独り言


週明け
○1年C組教室
担任「今月末に行く合宿の班分けをするぞー。男女2人ずつ計4人で各自自由に組んでもらって構わないから」
周りの様子を見ながら班を作り出すクラスメイトたち。美月とアイコンタクトを取る清華に榎本が声をかける。
榎本「吾郷ちゃん、一緒の班にならない?寺ちゃんも一緒にさ」
美月と木梨が寄ってくる。
清華「私はいいけど、美月大丈夫?」
美月「うん、大丈夫だよ!」
木梨「よろしくな!」

○放課後、校門付近
1人で帰ろうとしている清華。美月はサッカー部のマネージャーとして仮入部開始。
門に隼人と目黒が立っている。清華が隼人に気づく。
清華(え…もしかして私を待ってる?)
目黒「あ!生清華ちゃんだぁー!」
清華に気づき、近づいてくる。
清華(生?)
目黒「俺、目黒一平、よろしくねーん」
清華(何この先輩…見た目も中身もチャラい…)
目黒が握手しようと手を差し出す。
バシッ、横に来た隼人が手を払う。
清華「…!?」
目黒「いってー」
隼人「触ろうとすんな」
目黒「握手ぐらいいいじゃーん」口を尖らせる

3人で駅まで歩いている図、真ん中清華。目黒が1人でなんか喋ってる。隼人はたまに相槌。
清華(え、何この状況…。この2人いつまで付いてくるんだろう。さすがに電車までは…)

清華「…。」目元か顔のアップ。
電車内で2人に挟まれて座っている清華の全体図。
清華(電車まで乗ってきたんだけど!!)
チラッと隼人の顔を見る。
清華(まさか本当に家まで送るつもりじゃ…)

次の駅に着いた。
目黒「俺ここの駅だから。清華ちゃんまた明日ね。隼人もお疲れー。じゃあねー」
手を振り降りて行く。会釈する清華。
清華「…。」
気まずそうな顔をしている清華の横に他校の男子高校生が座る。肩触れる近さ。
隼人「席替わって」
そう言い立ち上がり、座る位置を替わるように動く。疑問に思いつつ、言われるがまま席を替わる清華。
隼人「手繋いどこっか」
手のひらを向けてくる。
清華(え、なぜ…?)
「ごめんなさい、繋ぐ意味が分かんない…です」
隼人「付き合ってんだから繋ぐでしょ」
キョトンとする清華。
清華(付き合ってる…?誰と誰が?)
早くと言わんばかりに手を出したまま清華をずっと見ている隼人。
清華(もしかして…私たち付き合ってることになってる…?)
戸惑いながらも少しだけ浮いた清華の手。その瞬間を見逃さず、清華の手を取った隼人。恋人繋ぎをする。
隼人「指細いね」
ぎゅっと握られ、頬を染めドキドキする清華。
清華(この感情は一体何なんだろう…)
真っ直ぐ座る清華に対し、少し清華に寄り掛かるように座る隼人の全体図。手元繋いだまま。