「……美しいですね。あなたが作ったものが、この部屋を完成させる気がします」
「そんな、大げさな……」
「いいえ。本当です。あなたの味があると、満足したものが描ける」
彼の声は穏やかで、
けれど、その奥に何か――言葉にできない熱が混ざっていた。
わたしは、オーブンの余熱のせいだけではない温かさを、
頬のあたりに感じていた。
数日後。
アトリエの扉を開けた瞬間、甘い香りがふわりと漂ってきた。
「……あれ?」
驚いて顔を上げると、神城さんが奥のキッチンに立っていた。
袖をまくり上げ、カウンターに材料を並べている。
「いらっしゃい、真白さん。今日もありがとうございます」
「いえ……その、これは……」
「前回、お菓子を作ってくださったときに思ったんです。次は、もう少し真白さんが作りたいものを作れるようにしたいなと」



