けれど、ふと神城さんが筆を止めてこちらを見た。
「――何か、違う気がします」
「え?」
「真白さんを描いているのに、僕の描きたい真白さんじゃないみたいだ」
「え……?」
「……そうか。あなたの作るお菓子の匂い……!あの香りがないと、僕が描きたい真白さんにはならないんだ……」
その言葉に、わたしは思わず目を瞬いた。
「……お菓子の、香り……」
「ごめんなさい、変なことを言いましたね。でも、お願いしてもいいですか?――何か、焼いてみてほしいんです。この部屋に“真白さんの作る香り”を入れたい」
あまりに唐突な提案だった。
けれど、不思議と嫌ではなかった。
むしろその真剣な目に、断る理由が見つからない。
「……いいですよ。何か、簡単なものなら」
「本当ですか?」
神城さんの顔がぱっと明るくなった。
その表情に、胸の奥が少しだけ熱くなる。



