店の休みの日。

昼下がりの光がカーテン越しに柔らかく滲むころ、スマートフォンが小さく震えた。


画面に表示された名前を見て、指先が少しだけ止まる。


――神城 煌。


イベントのあと、ポスターの打ち合わせで連絡先を交換したままだった。

けれど、彼から直接メッセージが来たのは、これが初めてだった。



短いメッセージには、こう書かれていた。


「新しい絵のモデルを探していて。もしよければ、真白さんにお願いしたいと思っています。明日の午後、少しだけお時間をいただけませんか?」


心臓が一拍遅れて跳ねる。

“モデル”――その響きに少しだけ戸惑いながらも、自然と「はい」と返事を打っていた。


そのまま、例の“スイーツ好きが歌”さんの投稿を確認しようと、アプリを開く。

今度はレモンケーキの感想が新しくつぶやかれていた。


“まるで陽だまりをそのまま閉じ込めたような味”


(酸味はあるけど、優しい味がするケーキだったのかな)

この人の投稿を見ると、なんだかうれしくなってくる。

それに、なぜか他人事とは思えなかった――