「残ってくださってたんですね」
「ええ。ずっと見てましたよ。……忙しそうだったから、あれから声はかけられませんでしたけど」
「そんな、気を使わなくても」
「いえ。あなたの“働く姿”を見ていたかったんです」
その言葉に、思わず息を止めた。
穏やかな笑みなのに、どこか射抜くような熱があった。
神城さんは、ブースの端に残っていたケーキの切れ端を指さした。
「少し、残ってますね。……いただいてもいいですか?」
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
神城さんは、フォークで一口すくって口に運ぶ。
目を閉じ、ゆっくりと味わう仕草。
「いくらでも食べられそうです」
「さっきも1つぺろりと平らげてくれてましたもんね」
「ええ。真白さんのケーキは甘いだけじゃないですからね。深い味がします」
「……深い、味?」
「そう。――だから僕は、惹かれるんです。これでまた新しい絵が描けそうです」
低い声でそう言うと、神城さんは空を見上げた。
夕暮れがゆっくりと夜へ沈んでいく。



