「……考えてみます」
それだけ答えてスマホを伏せた。
けれど、指先に残る微かな震えが、自分の本心を隠しきれていないことを、誰よりも自分がわかっていた。
その震えが、いつまでも止まらないまま、午後の光だけが静かに差し込んでいた。
カラン――。
昼下がりの穏やかな空気を破るように、ドアの鈴が鳴った。
顔を上げると、そこに立っていたのは――神城さんだった。
今日はいつもの黒のコートではなく、淡いグレーのシャツに薄手のジャケット。
柔らかな笑みを浮かべ、ショーケースの前に静かに立っている。
「こんにちは」
「……こんにちは」
胸の奥で小さく波が立つ。
けれど前みたいに緊張で固まることはなかった。
神城さんは少し迷うようにポケットの中を探り、何かを取り出した。
「これ……渡したくて」
差し出されたのは、一枚の招待チケットだった。
淡い白地に銀色の文字で――“神城煌 個展 ― 透明な記憶 ―”。



