――あの日から、一週間。
神城さんは、それきり店に現れなかった。
気にしていない。
……つもりだった。
けれど、ドアの鈴が鳴るたびに胸が一瞬だけ跳ねる。
そのたびに「違う」と自分に言い聞かせて、ショーケースを拭く手を動かした。
なのに、ガラスに映る自分の表情は、どう見ても“期待してる人の顔”だった。
(ほんと、何してるんだろう……)
スマホが震えたのは、閉店後のことだった。
『真白ー!今日もお疲れ!』
画面には彩花の名前。
通話ボタンを押すと、いつもの明るい声が耳に飛び込んできた。
「おつかれ。元気してた?」
「まあね。そっちは?また変な客とか来てない?」
思わず言葉が詰まる。
その“変な客”という言葉に、心臓がちくりと反応した。
「……ううん。もう来てないよ」
「そっかー。なんか、あの人また現れそうって思ってたけど」
「それはわたしも思ってた。常連になろうかなって言ってたくらいだから」
「あれからちょくちょくあの人のこと聞いてたけど、怪しい人じゃなくてよかったよね。……ちょっと変な人ではあるみたいだけど」
「そうだね」



