カラン――。
昼下がりの店内に、ドアの鈴が軽やかに鳴り響いた。
その音だけで、胸の奥がひやりとしたのを自覚する。
(……また、来た)
視線を向けると、そこに立っていたのはやはり彼だった。
黒のコートは今日は脱いで腕にかけ、シャツの袖を少しだけまくっている。
前よりもずっと穏やかな顔だった。
「こんにちは」
柔らかな声。
あの日の勢いはどこにもなく、どこか落ち着いて見えた。
「いらっしゃいませ」
自分でもわかるほど、声が少しだけ硬い。
彼――神城煌は、ショーケースを見ながら微笑んだ。
「今日も来てしまいました」
「……常連さんになるつもりですか?」
思わずそんな言葉が口をついた。
すると、彼は嬉しそうに目を細めた。
「それ、悪くないですね。じゃあ常連にしてください」
冗談めかした言葉に、苦笑が漏れる。
けれど胸の奥では、やっぱり警戒の灯が消えない。
彼は今日も焼き菓子をいくつか選び、静かにカウンターへと差し出した。
その仕草は丁寧で、前回よりも距離を取っている。



