溺れるほど甘い、でも狂った溺愛



手が、少しだけ震えた。


画面を閉じようとしても、閉じられなかった。

その光の中に、まるで引きずり込まれるように目を奪われていた。


(……ほんとに、変な人)


呟いて、自分に言い聞かせるようにスマホを伏せる。

部屋の中がやけに静かで、外の風の音だけが耳に残った。


(今夜は――どうしても眠れそうにないや)



――翌日。


朝の開店準備を終え、磨き上げたショーケースに光が反射する。

厨房から漂うコーヒーの香りが、ゆっくりと店内に満ちていった。


「真白ちゃん、朝のブレイク入れよっか」

「はい、ありがとうございます」


芙美子さんが差し出してくれたカップを受け取り、ふっと息をついたとき――

ふと思い出してしまった。


昨夜、何度もスマホの画面を見つめたあの名前を――。


(……聞いてみてもいい、よね?)


「芙美子さん、“神城煌”っていう人、知ってますか?」


何気ない風を装って口にしたつもりだったけれど、自分の声が少しだけ上ずっていた。