「……ねえ、これ、買ってもいい?」
「もちろん。僕も買うよ」
「自分の描いた本、買うの?原本もらってたよね?」
「あれは返したからね。それに、真白と一緒に持っておきたいから」
そう言って笑う煌の声が、穏やかに響いた。
二人分の本をレジに通す音が、どこか嬉しそうに鳴り響く。
本屋を出ると、夕方の風が頬を撫でた。
帰り道、信号待ちの間に煌がふいに口を開く。
「そうだ、ひとつ話があって」
「話?」
「映画のポスターの依頼が来たんだ。新作の恋愛映画でね、“静かな愛のかたち”がテーマらしい」
「わあ……映画のポスター! すごいじゃない!」
嬉しさと同時に、少しの緊張が胸に広がる。
煌はまっすぐ前を見つめながら続けた。
「監督さんから、“どんな愛を描くか”は君の自由にしてほしいって言われた。でも、まだ答えが出てなくて」
「うん……難しいね」
「でも、ひとつだけわかってることがある」



