朝の光がやわらかく差し込む部屋。
カーテン越しの風がふわりと揺れ、コーヒーの香りが漂っていた。
スマホがテーブルの上で小さく震える。
画面に表示された名前に、思わず口元が緩んだ。
『おはよう。真白、起きてる?可愛い真白に早く会いたい』
「……もう、朝からそういうこと言わないでよ」
思わず呟きながらも、指先はすぐに返信を打っていた。
『仕事終わりに家によるね。お仕事、頑張って』
その短いメッセージだけで、胸の奥がぽっと温かくなる。
日常が戻ってきた。
けれど、その日常の中には、もう煌がいた。
昼下がり。
厨房にはバターと焼き菓子の香りが満ちている。
わたしはカスタードを炊きながら、自然と鼻歌を口ずさんでいた。
ご夫婦が奥のテーブルで材料の確認をしている。
「最近の真白ちゃん、なんだか楽しそうね」
「うん、顔つきが明るくなった気がする」



