言葉が詰まる。
煌の顔が思い浮かんで、自然と息が震えた。
「煌にも、近くにいてほしいから」
その一言が、静かな部屋に落ちた。
煌はゆっくりと息を吐き、テーブルの上でわたしの手をそっと包んだ。
「真白。僕は、あなたがどんな選択をしても、応援する。もし東京に行くって言われたら……正直、寂しい。でも、“夢を描く人”の邪魔はしたくない」
その声が優しくて、胸の奥に沁みた。
「でもね」
と、煌が続けた。
「真白がこの街に残るって言うなら、僕はそれも嬉しい。だって、真白の活躍をずっと近くで見ていられるから」
「……煌」
「真白がケーキを作ってる時の顔、あれが一番好きなんだ。すごく楽しそうで輝いてて……見てるこっちが幸せになる」
わたしは黙ってその言葉を噛みしめた。
心の中にあった不安が、少しずつ溶けていく。
(……わたし、何を一番大切にしたいんだろう)
目を閉じると、浮かんでくるのはあの厨房の光景。
笑い声と、焼き菓子の匂いと、温かな人たち。
「煌……ありがとう」
「僕は、何もしてないけど」
「してるよ。ちゃんと、心を整理する時間をくれた」



