「……誰だろう。今、いいところだったのに」
不機嫌を隠そうともしない声に、思わず小さく笑ってしまう。
ドアを開けると、そこに立っていたのはスーツ姿の男性。
きちんとした仕草で軽く会釈をする。
「篠原です」
「……篠原さん?」
アートマネージャーの篠原さんだった。
「急に来てすみません。小説の原本が届いたので、直接お持ちしました」
煌は少しだけため息をつきながらも、「どうぞ」と声をかけて部屋へ招き入れた。
わたしはキッチンで小さな焼き菓子を作っていたところだった。
扉を少し開けたまま、二人の声が自然に耳に届く。
「……で、藤堂先生の新作。印刷もほぼ完了です。あなたの表紙がすばらしいと編集部が絶賛していました」
「ありがとうございます。あれは、特に思い入れがあるので」
「あれだけ没頭して描いてましたもんね。モデルさんもいらっしゃったようですし」



