「ねえ、真白」
「うん?」
「こうしてる時間が、一番好きです。描くよりも、たぶん」
言葉の意味に息を呑む。
けれど、その瞳に偽りはなくて。
わたしは小さく笑って答えた。
「……実は、わたしも」
部屋の中に流れる午後の光が、やわらかく二人を包む。
静かな時間の中で、ふたりの距離は、もうすっかり恋人そのものだった。
午後の陽が傾きはじめたころ。
穏やかな空気に包まれた煌の部屋で、わたしたちはまだ、他愛もない話をしていた。
「ねえ、この前のケーキ。また食べたいんだけど」
「……もう、この前も作ったばかりなのに」
「真白が作るなら、毎日でも食べたい」
そんな他愛もない会話の途中――
――ピンポーン。
チャイムの音が部屋の空気を切り裂いた。
煌がわずかに眉を寄せ、名残惜しそうに立ち上がる。



