「や、やめて……」
「嫌?」
「……嫌じゃ、ないけど……」
「なら、もう少し」
首元に息がかかるたび、心臓が落ち着かなくなる。
それでも、嫌ではなかった。
むしろ、胸の奥がくすぐったくて――心地よかった。
ようやく離れた煌は、スケッチブックを取り出した。
「見せたいものがあるんだけど」
「……もしかして、絵?」
「まあね。でも、これは真白用」
ページをめくると、そこにはいくつもの小さなデッサンが並んでいた。
ケーキを作る手元。
笑っている横顔。
試作品を見つめている姿。
「これ……全部、わたし?」
「うん。描きたくなるんだ。真白を見てると」
「……もう、そういうこと平気で言う」
「本当のことだし」
煌の声はいつもより穏やかで、低くて、優しい。
まるでその言葉自体が抱きしめてくれるみたいだった。



