「……して、ない。……するわけないじゃない」
わたしは首を横に振る。
「むしろ、すごいなって思う。何事にも真っすぐで、全力で――そんな煌が、わたしは好き」
その言葉を言った瞬間、煌の目がわずかに見開かれた。
そして、何かが切れたようにわたしを抱き寄せた。
「――っ!」
肩に回された腕が熱い。
胸の鼓動が近くて、息が詰まる。
「もう……我慢できない」
囁きと同時に、唇が触れた。
外の風が冷たいのに、その温度だけがやけに鮮やかだった。
一行になれる気配はなく、でも、離れたくなかった。
ようやく唇が離れたとき、わたしは顔を真っ赤にして俯いた。
「……外、なんですけど」
「知ってる」
「……恥ずかしい」
「今まで、我慢してたんだ、ずっと。褒めて」
その言葉に思わず笑ってしまう。
「……そんなの、褒められるわけ……ない、じゃない」
でも、胸の奥では――
そんな煌が、どうしようもなく愛おしかった。
夜風がやさしく吹き抜ける。
その温度の中で、わたしたちはもう、
互いの心にまっすぐ向き合っていた。
手をつないだまま、ふたりで見上げた夜空は、
イベントの照明よりも、ずっと優しい光をしていた。



