溺れるほど甘い、でも狂った溺愛



長い髪、華やかな化粧。

見覚えのない女性――けれど煌の表情が一瞬だけ固まった。


「……あれ? どこかで……」

「ふふ、忘れた? まあ、そうよね」


彼女は口元に皮肉な笑みを浮かべた。


「昔付き合ってた女のことなんて、覚えてるわけないものね」


わたしは思わず息をのむ。

煌が眉をひそめ、わずかに目を伏せる。


「……そうか、あの時の」

「変わらないのね。相変わらず絵ばっかりなんでしょう。ねえ――その子、もしかしてあなたの彼女さん?」


突然向けられた視線に、身体がこわばる。


「え、あ……いえ――」

「そう」


女性は静かに笑い、けれどその声には棘があった。


「忠告しておくわ。この人は、誰かを愛することなんてできないの。絵ばかり見て、目の前の人の気持ちなんて見えなくなる。あなたのためにも、別れた方がいいわよ」


そのまま踵を返し、夜の街に消えていった。