溺れるほど甘い、でも狂った溺愛



気づけば、煌は一歩下がってその光景を見つめていた。

少し誇らしそうに、少し安心したように。


列の端で、あの人物――わたしを陥れたあの人が、顔を引きつらせながら自分のブースを見ていた。

自分の店のケーキがまだ半分以上残っている。

それなのに、わたしのケーキの箱はどんどん消えていったからだろう。


やがて、試食皿が空になり、最後の一箱が手渡される。


「――完売です!」


スタッフの声に、わたしは思わず息を呑む。

両手でエプロンを握りしめ、笑みが自然にこぼれた。


「……本当に、全部……」


ふと視線を上げると、人混みの向こうで煌が軽く手を振っていた。

目が合った瞬間、口の動きが見える。


――“おめでとう”。


わたしは、声にならない返事で微笑みを返した。

喧騒の中、ひとり静かに胸の奥で呟く。


(ずっと――見ててくれたんだね)