「いただきます」
小さくフォークを動かし、ひと口。
口の中でゆっくりと溶けていく味に、彼は静かに息をついた。
「……やっぱり、優しい味がしますね」
「もう、そんなこと言って……」
頬を染めたわたしの声に、彼が笑う。
――その時だった。
「えっ、あの……神城煌さん、ですよね!?」
隣のブースに並んでいた女性客が声を上げた。
その瞬間、周囲の空気が一気にざわつく。
「え、今朝のテレビに出てた人?」
「天才って言われてる画家さんでしょ?」
一気に人だかりができ、煌が軽く手を上げて応える。
「はい、そうです。少しだけ……ここのケーキを食べに来ました」
「このお店のケーキ?」
その一言に、視線がわたしのブースへ一斉に集まった。
「へえ、若い子がやってるんだ」
「可愛いケーキ!」
「じゃあ私も食べてみようかな」
次々と試食皿が差し出され、あっという間に人の列ができた。



