朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の空気をやわらかく照らしていた。

いつもより少し早く目が覚めたのは、きっと昨日の緊張がまだ身体のどこかに残っているからだ。


(ニュース……って、言ってたよね)


朝食の用意をしながら、リモコンを手に取る。

どの局かは聞いていなかった。

だから、チャンネルをいくつも変えながら、番組の合間をたどっていく。


天気予報、経済ニュース、旅番組――どれも違う。

最後に止めたのは、文化情報を扱うニュース番組だった。


『人気作家・藤堂清志氏の新作が、来月発売されることが発表されました――』


キャスターの声とともに、画面に新作小説の表紙が映し出される。

その一瞬で、胸の奥が小さく跳ねた。


淡い群青の背景。

一筋の光が、静寂の中を真っ直ぐに貫いている。


――見間違えるはずがない。

あの筆の流れ、あの光の描き方。


「……煌、だ」