街の通りは、夕方の光でやわらかく染まっていた。
スイーツフェスタに向けた買い出しを終え、両手いっぱいの紙袋を抱えて歩く。
ふと横を見ると、煌はいつも通り穏やかに笑っていた。
「……持ちますよ」
「大丈夫です、軽いので」
「そう言うと思いました。じゃあ、せめて――」
言葉の途中で、彼の手が紙袋ごとわたしの手を包む。
指先が触れた瞬間、胸の奥が小さく跳ねた。
「っ、ちょ、煌……ここ外ですよ」
「知ってます」
「知っててやってるんですか?」
「もちろん」
あまりにあっさりと返されて、言葉を失う。
周りを見渡せば、行き交う人の視線もちらほら。
「……見られたらどうするんですか」
「見せたいんだけど」
「な……何を、ですか」
「僕にとって真白が特別だってこと」
(……もう、ほんとにこの人は)
口では困ったふうに言いながら、手を離す理由を探す自分の指は、少しも動かなかった。



