気づけば、涙の跡が指先に触れる。 そのまま、彼の顔が近づいた。 「真白……」 名前を呼ぶ声が、熱を帯びて溶ける。 息が触れ合う距離。 次の瞬間、唇が重なった。 それは、慰めでも同情でもなかった。 ――確かに、想いのかたちだった。 胸の奥が静かに熱を宿し、 世界が、少しだけ温かく滲んで見えた。 この夜、胸の奥でずっと凍っていたものが、ようやく溶けていった。