その声が、胸の奥に静かに沁みていく。
わたしは息を吸い込み、小さく頷いた。
「……ありがとうございます」
部屋に流れる静かな夜気の中で、
遠くの街の灯りが、まるで星のように瞬いていた。
その光の中で、わたしは思った。
――怖いけど、逃げたくない。
今度こそ、過去の自分と向き合いたい。
そう決意したわたしは、“あの出来事”を初めて口にした。
「この話をするのは、ずっと怖かったんです。でも――今なら話せる気がします。」
わたしはゆっくりと息を吐き、指先をぎゅっと握った。
「……わたし、専門学校の頃、“天才”って呼ばれてたんです。最初は、ただ褒め言葉だと思ってました。でも、いつの間にか――それが、周りと距離を作る言葉になっていて――」
淡い光の中、過去の映像が静かに浮かぶ。
実習室のざわめき、甘い香り、そして誰かの小さな笑い声。
「陰で、いろんなことを言われるようになって……。“あの子の味、そんなに特別?”とか、“運がいいだけでしょ”とか。でも、わたしは気にしてないふりをしてました」



