煌は微笑んで、キャンバスに目を向けた。
筆を手に取る指先が、静かに震える。
「真白が頑張るなら、僕も描きたくなる。次の絵は――真白の“新しい味”に似合うものになりそうだ」
その言葉に、わたしは少しだけ笑った。
「じゃあ、わたしも負けてられないですね」
「勝負、します?」
「そうですね。どっちが“美味しそうな世界”を作れるか」
煌は、ゆっくりと頷いた。
「いいですね。――どちらにしても、僕の絵はもう、真白の作品がないと始まらないんですけど」
「……また、そういうこと言う」
言いながらも、頬がほんのりと熱を帯びていくのがわかった。
アトリエに流れる静けさの中で、
湯気と甘い香りがふたりを包み込む。
その夜、ノートに、
小さな文字でこう書き足した。
――“次のイベント、きっと笑って終われますように。”



