「フェリクス・ダルトワ! エリナを返して貰おうか」
冷静沈着で表情管理もバッチリなキルステンが、怒りを隠せずにいる。
(本当に猫が好きなんだ)
「キルステン・ルスラム皇太子殿下にフェリクス・ダルトワがお目にかかります」
挨拶をするなり、キルステンにスッと私を差し出すフェリクス。
私は思わずフェリクスから離れまいと彼にしがみついた。
猫としてでもキルステンと一緒にいたいと思ったけれど、私の女の部分が限界。
これからビルゲッタとしての私は邪魔だったかのように離婚を突きつけられ、キルステンは美しい聖女と恋をする。そんな姿を見て平気な程、私のキルステンへの想いは軽くはなかった。



