「キルステン、お前は聖女アルマと結婚させる。ビルゲッタのような傷物と違い美しい女だ。お前も抱く気が起きるのではないか?」

エマヌエル皇帝が自分のお腹の辺りを抑えながら、口の端をあげる。

今はないが、私はお腹に大きな傷跡があった。私の我儘なゴリ押しで十八歳でキルステンと結婚できたのは、彼が傷跡に責任を感じていたからだ。傷物の花嫁など誰も欲さない。

私はこれ以上、二人の会話を聞いていられずその場を後にした。皇城を出ると、激しく剣を交える金属音が聞こえる。騎士達の訓練場の辺りまで来てしまったようだ。白い騎士服は近衛騎士団。その中に真っ赤な髪を靡かせて一際強い男がいた。