人間だった時は婚約者になっても、結婚して妻になっても無関心だった彼。猫になって彼の関心が得られているなら、このままの姿で良い。

きっと、昨晩人間に戻ったのは私の夢。いかがわしい仮面舞踏会の会場など諸外国から敬われるルスラム帝国にある訳がない。フェリクスに強く抱き締められた時の熱だけは妙に生々しいが、きっと夢。

「今日はゆっくり二人で朝食を食べよう」

キルステンは優しく微笑むと、そっとガウンを脱いで着替えを始めようとした。ふわっと上品な金木犀のような香りが鼻を掠める。