目の前の男もサッと身に付けていた黒い仮面をとった。

「ビルゲッタ皇太子妃殿下、あのような卑猥な場所で何をしていらっしゃったのですか?」
そこには見慣れた私の幼馴染の顔。

「フェリクス。私ね、私⋯⋯」

ケネトと同様、私にとってフェリクスは兄のような存在だ。幼い頃から私を見てきた彼は私のダメな所をたくさん知っている。

「ビルゲッタ⋯⋯どうしたんだ。キルステン皇太子殿下の誕生祭にも欠席して、あんな卑猥なパーティーに参加するなんて⋯⋯」

私の弱々しい様子を見て、フェリクスは私に昔から接するような様子に戻った。彼に手を引かれ、キルステンとお茶をしたパティオの影まで誘導される。