(えっ? フェリクス、ちょっとお遊びが過ぎる!?)

指先の少し硬い感触や、男らしい香りに覚えがある私は戸惑った。私の本能が目の前の男は幼馴染のフェリクス・ダルトワだと言っている。でも、彼とは家族のような関係で、私がキルステンと結婚した後は主従関係。こんな風に体を密着させて踊ったこともないので、ドギマギしてしまう。

私は戸惑いながらも、悪目立ちしないよう目の前の男のがっしりした胸板に身を寄せた。

「お嬢様、顔が少し赤いです。人酔いしているのではないですか? 季節も良いので少し外を散歩しましょうか?」