見覚えのない濃紺の髪をまとめ上げたメイドが茶葉をゆっくりとブレンドして紅茶を淹れてくれる。

皇城に通い詰めて十年、結婚して二年。

メイドの顔ぶれは覚えたつもりだったが、流石に入れ替えもあるだろう。
(濃紺の髪のメイド⋯⋯誰?)

私は一口、紅茶に口をつける。
予想外の苦さを感じ、これから来るであろう初恋の終わりに思いを馳せた。

「キルステン、明日はお誕生日ね。一日早いけれど、お祝いを言わせてくださる?」
「相変わらず、君のすることは訳が分からない。明日、言えば良いだろう」

私の方を見ようともせず、彼はどんよりとした曇り空を見つめていた。