前世の記憶を思い出して、しばらくは苦しんだ。前世の私は十五歳という若さで命を失っている。通学中のバスが横転してから記憶がない。小学校から女子校だった私が恋していたのは本の中の人キルステン。彼がいたから、私は前世の死を受け入れビルゲッタとして前を向く事ができた。

私は今日まで十年以上、彼の心の扉を開こうと努力を重ねてきた。 しかし、彼が心を開くことはなかった。
(もう、ダメだ⋯⋯)

キルステンは相変わらず私に素っ気ない。
原作との違いは私が彼の婚約者ではなく、妻になっていることだけ。
妻になってもキルステンが私の寝室を訪れることはなかった。