消え入りそうな声で呟く彼の声を私は見逃さない。

「私にとってフェリクスは兄のケネトのような存在よ。私に触れて良い男はキルステンだけ」
怖いけれど彼の手をとって私は自分の方に引き寄せた。
ふとクーハンの上ですやすや眠るフランシスが目に入る。
馬車の揺れが心地よい上に今日は色々なことがあり彼も疲れているのだろう。
クーハンより大きな体を投げ出すように寝ている彼は生まれてから随分と成長した。

「ビルゲッタ、こちらを向いてくれ」
頬に手を添えられ、キルステンのアメジストの瞳と目が合う。
彼の顔が近付いてくるが、私はまず私を支え続けてくれたフェリクスについて話をしよう口を開いた。