父が粛清したアボット公爵家の遠戚でもあるモリンダ子爵が剣を振り上げた。

まだまだな僕は慌てて予想外の行動をする。
彼の振り上げた剣を手で掴んでしまった。
手から鮮やかな鮮血が流れる。

「ありがとう。僕の為に怒ってくれたのだな、モリンダ子爵」
「違います! ビルゲッタ様が侮辱されるのが許せなかっただけです」
はっきりと言い返すモリンダ子爵は嘘をつけない人なのだろう。
そういう信用できる人間は必ずビルゲッタを好きになる。

『キルステンが大きかったから』

顔を真っ赤に染めた彼女の言葉が脳裏に過ぎる。
比べる対象もないくせに男を煽るような言葉をさらっと吐くビルゲッタ。