夜の静寂は破られ危険と陰謀が蠢いている。

僕が帰還するなり、グロスター公爵が足早に近付いていた。
父が皇帝になる前より宰相の地位にいた彼はこの帝国を所望している。

「公爵、こんな時間に皇城に何のようだ」
僕の冷ややかな言葉に咄嗟に焦ったような表情を作る彼。
口元がわずかに綻んでいるのを僕は見逃さなかった。
(何か企みが成功したという顔だな)

「皇帝陛下が危篤でして」
「父上が危篤?」
「はい。持病の発作かと思われますが、私が謁見中に突然胸をおさえて倒れました」
「そなたが毒でも盛ったんじゃないのか?」

僕の言葉に周囲の近衛騎士たちがざわつく。