彼らはフェリクスの同僚だった人間だ。

騎士の命である利き腕を折って、酷い暴行した上で確認する命令は一つしかない。
キルステンはフェリクスに死罪を言い渡したのだ。
先程、フェリクスを私の護衛騎士にすると言ったのは私の反応を伺う為だろう。

私は緩くなったキルステンの拘束を離れフェリクスに駆け寄った。
「ビルゲッタ?」
後ろからキルステンの戸惑うような声が聞こえる。
私はそっと目を瞑り、冷静さを取り戻した。
(もう、彼は私が愛した男じゃないわ)

「元皇太子妃ビルゲッタ・ルスラムとして命令します。フェリクス・ダルトワ卿から離れなさい」
私の言葉を聞くなり、慌てて両側の二人が慌てて拘束を解く。
今の私の立場に権限なんてないけれど、二人の騎士たちは元同僚のフェリクスを処刑することに迷いがあったようだ。私が出した逃げ道に飛び付いた。