「正体? 僕の前に現れた猫が君だということには最初から気がついてたよ。不思議だな。人間の君にはできないのに猫の君とは自分が君としたかった事ができたし、あげたかった言葉を紡ぐことができた」

私の中で猫として過ごしたキルステンとの甘い時間が蘇る。手づから生ハムを食べさせて貰い、一緒のベッドで寄り添うように温もりを交換しながら眠った。彼から薔薇風呂に一緒に入ろうかとも誘われた。

「フランシスは僕の子だな」
急に真剣な眼差しを向けてくるキルステン。

私は狼狽えてしまった。
フランシスが猫だった姿も見ていたとしたら、キルステンはまた自分の行動に責任を感じてしまう。