事前に、フェリクスから私の正体についてはクリフトン様に対して秘密にしていると聞いていた。ただでさえ、女である私と会いたくないクリフトン様が面倒な身元を告げたらもっと会ってくれないからだ。

「私はエリナです」

嘘ではない。これはキルステンが私につけた大切な名前。
私の言葉を馬鹿にしたようにクリフトンが声を出して笑い出す。

「私の助けを借りたいなら、くだらない嘘はやめなさい。貴方は今、なんてことはない見窄らしい平民の服を着ている。それでも、振る舞いはドレスを着る時の仕草。身分の高い人間のする人を見定めるような目つき。美しい銀髪は惜しくても染めるべきだったわね」