もし、今見えた作業服の人が私の正体に気がつき、通報したらどうする気なのかと焦る。私は、まじまじと作業服の男性の行動を観察した。

「私、あの人が何をする方か知ってるわ。ああやって地面を操作して、泉の中から噴水を噴射するんでしょ。ルスラム帝国にはない噴水技術ね。この街の泉も噴水にしたら、人々がもっと集まりそうね」

潜伏するには、この街は皆が知り合いで不向きだと思っていた。もっと、観光客が集まって賑わってくれるとありがたい。
私の言葉を聞くなり、なぜかフェリクスは急に頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

「お前を驚かせたかったのに⋯⋯」