妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!

隣にいるフェリクスの顔を見上げると、彼がずっと私を見つめていた事に気が付く。

「ビルゲッタ、俺は本当にずっと君のことが⋯⋯」
私は思わず「ビルゲッタ」という本名を呼ばれ、手でフェリクスの口を塞ぐ。壁に耳あり、障子に目あり。どこで、誰が身を潜めて聞いているかも分からない。その時、私の目にフェリクスの後ろを通る鉄の棒を地面に差し込む灰色の作業服を着た男性が見えた。

「あっ、あの方は!」
「ビルゲッタ⋯⋯それは、その内に分かるから今は俺に集中してくれる?」

また、彼は私の名前を呼んだ。