「喧嘩できるくらい、仲良くなれれば良かったのだけれど⋯⋯すみません、お兄様、心配しないで! 私は大丈夫。今日はもう疲れたので部屋で休みます」

口角を上げて笑顔を作ってたのに再び涙が溢れてきてしまい、私は慌てて階段を駆け上がり自室に籠った。

頭までシーツを被り、枕を噛みながら声を殺して泣きじゃくる。はるか昔からキルステンが好きだった。 小説を読んだ時から彼に惚れ込んでいたのだから私の愛は海より深い。冷たいようで、誰よりも愛情が深い美しい皇太子キルステン。 彼の心の扉を開くチャンスを十二年も貰い結婚までしたのに、私には無理だったようだ。