まるで、ずっと会えなかった恋人と再会するようにフェリクスは私を愛おしそうに抱きしめた。私にとって彼はもう一人の兄のような存在。急に男の顔をされて戸惑ってしまう。

「攫う? フェリクスってば何を言って⋯⋯こんなところ誰かに見られたら」

私はフェリクスに相談したいことが山程あった。ある朝、猫になったと思ったら、夜には人間に戻っていたこと。聖女アルマが私を陥れようとしていること。

諜報員をしている彼なら何か知っているかもしれない。

「時間がない。ビルゲッタ、俺に捕まれ」
 
私は気がつけばフェリクスに横抱きにされていた。
彼は私の腕を自分の首に回させると、バルコニーから飛び降りる。