…そんな恋をしてみたいものだ。
あらすじと物語の大まかな内容を決めた花岡琳乃はため息を吐く。
会社に勤めながら、趣味として漫画をネットに投稿している琳乃。
「はなり」として漫画を描いているものの、自分で書いた恋愛漫画はただの妄想ばかりだった。
漫画にもリアルを追求する琳乃にとって、未知な恋愛を描くのはいつも避けてきた。
恋愛なんてしたくてもできない現状。
マッチングアプリはギリギリ20代のプライド的に“売れ残り”のレッテルが貼られそうで嫌で、かといって休日に合コンに参加するほどの体力や気力はない。
実際に自分が体験してみない恋愛を描くのは至難の業だが、【もう恋なんてしないと誓った翌日から年下の犬系男子に溺愛されてます】───通称「恋誓」の登場人物・上村奏のイメージキャラクターはいるのだ。
後輩の宮村奏介。
琳乃に対して猛アタックしているのかと聞かれたら全力の「NO」だが、奏の仕草は奏介とかなり似ている…はずだ。
創作中、彼のことを思い出すたびになんだか胸が疼く。
「…は、もしかして、恋、…?」
琳乃の恋愛経験の浅はかさは誰が見ても一目瞭然であり、恋愛のイメージは少女漫画とアニメからしか得ていない。
「んなわけないか、奏というキャラクターができて興奮してるだけ!きっとそう!」
琳乃がこの恋に気づくまでは、そう遅くはなかった。



