「ごめんね、叶芽。
わたし、湊都(・・)と付き合ったから」


───あの約束から、約二週間後の放課後。

私は手を繋ぎ合った湊都くんと詩歩を見つけて、「なんであんたと湊都くんが手ぇ繋いでんの!?」と詩歩に掴み掛かった。


「きゃっ」と甲高い声を出し、湊都くんは「詩歩!大丈夫?…あ、もしかして斎藤叶芽?」と聞いてきた。

「そうだけど」と返せば、

「俺の彼女に触らないでくんない?詩歩が可哀想だろ」と。


彼女。
カノジョ。
ふたりは、恋人?


なんでよ、約束したじゃん。


私とずっといたいんだよね?


だから私もそれに応えて、人生初の恋も諦めたじゃん。


なにそれ。

なにそれ。

意味わかんない。


「詩歩、っ…!!!」

怒りで震えた拳を、力任せで詩歩にぶつける。

わかんないよね、私の心の痛みも気持ちも。


「やめて、痛いっ」と叫ぶ高い詩歩の声も。

「落ち着けって!」と無理やり私の腕を掴んでくる湊都くんの声も。


何も私の心に届かなかった。


「ウラギリ」 fin?