僕のことを、好いてくれるのは嬉しい。
というか、好かれて嫌な人なんてほとんどいないと思う。

でも、“そのあと”が問題だ。


告白されて断れば、その思いを拗らせてストーカーになった女子。
断られた腹いせに根も葉もない噂を流した女子。


全部「本当」に居たから怖い。


下手したら命を落とす危険まである人間の恋愛関係は難しくて。


でも、傷ついて、それでも前を向こうとしている女の子がいたんだ。

一生振り向いてくれない、そんな“女性”に恋をした僕は、諦めもつかずにズルズルと片思い関係を続けている。

久しぶりの呼び出し、しかも手紙だから、どうせ気の弱い女子なんだろうな、って思ってたんだけど。

「朱雨くんのことが好きでした。

私と、付き合ってください」

震える指先をこちらに向けて、お願い握って、とぎゅうっと目を瞑ったのは、クラスメイトの西宮月(にしみやるな)さんだった。


「ごめんね、月さん」

何回目だろう。優しい目をして「ごめんね」と言うのは。

いつも目を細めて、告白された側の義務だと思って返してきたその言葉を、今日だけは誠心誠意伝えた。

僕を好きになってくれてありがとう。
勇気を出して「好き」と言ってくれてありがとう。
その想いに応えることができずにごめんね。
これからも、よろしくね。


「ありがとう、僕を好きになってくれて」


「初恋は夜に溶けて」 fin.