それを聞いて、八尋の表情はまた変わった。

「そう、でしょうか?」

 視線が泳ぎそうな様子になり、七海は不思議に感じる。

 でも少し心配になった。

 格好良い芸能人とはいえ、『誰かに似ている』と言われるのを好まないタイプなのかもしれない。

 そうだったら申し訳なかった、と思い、謝ろうかと思ったが、そこで耳に飛び込んできた音声があった。

(あれ、この声……?)

 それはHEROが喋る声だ。

 快活な声で、プロモーションの内容を歌うように話している。

 映像はボイス入りなのだ。

 セリフも少しあったらしい。

 動画をあまり見ない七海は、もちろん彼の声もちゃんと聞く機会がなかったのだが、数秒で思い当たった。

 目を瞬いてしまう。

「……すみません、先に切り出すつもりだったのですが」

 七海の頭に浮かんだ内容を察したように、八尋が非常に気まずそうに言った。

 頭に手をやり、軽く髪を弄る。

 その声は、映像から流れてくるHEROの声と似ている。

 喋り方はだいぶ違うが、こうして同時に聞くと、そう実感できた。