代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~

「いかがですか?」

 すぐに着け終わり、八尋は手を引く。

 近かった距離が離れて、ほっとする気持ちと、なぜか少し惜しいような思いを感じながら、七海は手を持ち上げた。

 刺激を与えるとまた落ちてしまうから、ごく軽く触れて感触を確かめるだけにしておいた。

「大丈夫です。すみません、着けていただいて……」

 イヤリングは元通り、しっかり着いた。

 安心してお礼を言う。

「いいえ。大切なイヤリング、失くしてしまわなくて良かったですね」

 八尋はその七海に対して、にこっと笑って優しいことを言ってくれる。

 その後、ようやく話に入った。

 元々、二人で話すために庭へ来たのだ。

 互いのことを知り合うための会話が、穏やかに始まった。

「一華さんは土日がお休みなのでしょうか?」

 その中で、ふと八尋が質問してきた。

 七海は何気なく回答する。

「お休みのときもありますが、教室は土日も開いておりますので、お仕事に出るときもありますね。代わりに平日がお休みになります」

 しかしこの回答により、話がとんでもないところへ発展するとは、まるで考えなかったのだ。

 八尋が頬を緩める。

 そして出てきた言葉は、七海をギクッとさせてしまった。

「そうなのですか。実は今度、水曜日に外せない用事があるのですが……」

 七海は一瞬で悟った。

 これはなにか、誘われてしまいそうだ。

 今日、この場限りにするつもりだったのに。

 ひやひやする感覚が背筋に走った。