「新田さん、僕がキミのどんな所を好きか知ってる?」
小狐を抱いて歩きながら、美風は恋に話しかける。
「例えば、ピュアな所。楽しい話を聞いて喜んだり、悲しい話を聞いて泣いたり、素直にできる所。そういうまっすぐで綺麗な所が、僕を惹きつけるんだ。」
散歩中の赤ちゃん連れのお母さんが横を通り過ぎる時、赤ちゃんが狐を指さした。
美風は立ち止まると赤ちゃんに
「バーイ」
と笑って手を振った。
「それからね。」
赤ちゃん連れが行ってしまってから美風が続けた。
「言っても言っても、性懲りもなく狐になっちゃう所。人前で狐になりかけて、僕や上野によく叱られるとこ。本当はそれは迷惑だけど、僕はそこも好きだったんだ。」
美風が腕の中の恋と目を合わせた。
「勇気を持って。新田さん。烏なんか、その時にすぐ人の姿になれば平気だよ。怖くない怖くない。大丈夫。大丈夫だから。」
腕の中の子狐は、キューンと一声鳴いた。

