「黒王子、お願い笑って笑って。きゃあ、笑った!」
「白王子、いつ見ても美麗だね。本当に綺麗!」
「樋山くんって、王子もだけど騎士も似合いそう。私だけのナイトになって!」
「上野くん、顔しかめてもかっこいい!。私を怒って!。お願い!。」
しばらくそのまま女の子達に写真を撮られていた宗介(美風は本当に迷惑そうな顔をしていた)は、やっと、壇上の恋と理央に気付いた。
「ついでにキスしてください!きゃあ!言っちゃった!」
「……」
ある女の子に頼まれたツーショットが終わったところで、宗介は壇上の恋を呼んだ。
「恋!」
宗介と居た女の子はちょっと傷ついた顔で恋を見上げた。
「悪いけど、僕、恋人居るから。」
そっけなくそう言うと、宗介はカメラを持った女の子を追い返そうとした。
心底うんざりした顔で写真を撮られていた美風がそれを見て首を傾げると、美風も恋を呼んだ。
「新田さん!」
それから、キスしてください、と宗介に言ってきた後輩に、
「本当に好きな人としなよ。女の子は誰でも彼でもにはキスなんてさせないよ。」
とフォローを入れた。
「迷惑。狂ってる。黒白王子って言って騒いでる奴らには、脳がない」
しんと静まってしまった人だかりに向かって、宗介が言い放った。
「悪いけど恋だけ。僕には特別が居るんだ。その他大勢ははっきり言ってどうでもいい。恋に一途、恋だけ大切。っていうか僕はっきり言って悪いけど女子に基本用事ないんだよね。そういう風に、僕に寄って来ないで貰える?。迷惑。鬱陶しいんだよ。」
「ごめんね、僕も。」
美風が穏やかな口調で言った。
「新田さんだけ特別なんだ。誰にも渡したくない。僕には好きな人が居て、だからこうやって写真を撮られるのも我慢できる。お愛想は言えるけど、心からは新田さんだけ。……この場で言えて良かった。」
「樋山は余計。ああ嫌だ嫌だ。応援しなくていいから、僕たちの事放っとけよ。迷惑。何が黒白王子だ、どうかしてるよ。今まで合わせてたけど本当は撮影会なんて、こっちは聞いてないんだよ。行った行った。早く帰れよ。」
「新田さんって新聞の公式三角関係の人ですか。」
さっきキスしてください、と言った後輩が聞いた。
「公式っていうか……」
「良いです!。応援します!。だから、私の事もちょっとは好きって言ってください。」
後輩の涙声に、宗介は虚を突かれた顔で黙った。
美風が言った。
「お前のせいだぞ。」
宗介は苛立った顔をすると、その顔はもう怒ってはいなくて、ハア、とため息ついた宗介はちょっと疲れた顔で後輩に今度は優しく言った。
「ごめんな。」
美風はふう、とため息をつくと、恋に笑いかけた。

