学校から家に帰って、恋は宗介の家に行った。

 リビングに入って行くと宗介は英単語のカードをめくっているところで、恋が来るのを見るとソファから立ち上がって聞いた。


「お茶?カフェオレ?ジュース?」

「お茶がいい」

「分かった。今淹れるね。」


 宗介はキッチンボードからガラスのコップを取ると冷蔵庫から出した麦茶を注いだ。



「そうそう、恋、今貼ってある学校の壁新聞、どう思う?」

 
 ソファに座って宗介が口を開いた。


「僕と恋のメールの内容が特集されてて、最近のメールのタイトル、全部載ってた。まったくどこで調べたんだか。明らかにプライベートの侵害だよな。僕がお前と樋山との浮気を怒ってるのとか、お前の雑貨屋に行ったっていう報告とかが、全部バラされてた。お前まだ見てないの?。使った絵文字まで特集されてたの。コピーして貼られて。」

「まだ見てない。」


 そう言ってから、恋は伊鞠に展覧会に誘われた事を思い出した。


「壁新聞の展覧会に誘われたんだけど、宗介も行かない?」

「展覧会?」


 説明すると、宗介は苛立った顔をした。


「加納先輩が受賞しただあ?。そんな馬鹿な話ってあるかよ?。いつものやつだったら、僕や恋が出しにされすぎてて、賞なんか取るはずがない。第一肖像権の侵害専門の新聞じゃんか。ったく賞をやったの一体どこの会社だ?。文句言ってやる。絶対認めないから。恋、わざわざ、そんなのを見に行くの?」

「面白そうだから」

「行かなくていいよ、そんなの。どうせ下らない事を書き立てて貰った賞なんだから。大した賞じゃない。新聞なんか、面白くもなんともない。加納先輩も石巻先輩も、僕と樋山の事をからかってるだけ。不快。迷惑。いい加減。恋も、そんなの関わらなくて良い。」


 きっぱり言った宗介に、恋はお茶を飲みながら、小さくため息をついた。