「新田さん、テストどうだった?」


 帰り支度を終えた美風が、鞄を背負って恋を振り返って聞いた。


「全然。できなかった。補習だって。」

「恋。恋、テストどうだった?」


 恋の言葉に被さる様に、後ろからやって来た理央が聞いた。


「樋山くんも。樋山くん何点だった?」

「僕は漢字はいつも満点だよ。暗記だしね。間違えようとしても間違えられないから。新田さんは補習だって。」

「恋!」


 その次に宗介が来て、恋が机に伏せていた漢字テストを勝手にぱらりと捲った。


「20点。昨日宿題で出たばかりの範囲なのに。さてはお前宿題やって行かなかったね。ったく。」

「上野くんテストどうだった?」

「僕は漢字は満点しか取らない。中学のは小学生の頃に終えて、今社会人の趣味の範囲やってる位だから。全く、恋、暗記もので点が取れないなんて、不真面目な証拠。」

「新田さんが残るなら、補習、僕も残ろ。」


 美風が言うと、宗介が美風を睨んだ。


「彼氏以外は余計。樋山は早く帰れよ。」

「嫌だね。僕は少しでも長く新田さんと居るんだ。漢字は暗記なだけだから、教えようがないけど。」

「駒井は何点だった?」

「私は70点だったよ。新出漢字間違えて覚えちゃって。」

 3人は、教卓の上から補習プリントを貰って来た恋を、恋の席で囲んだ。


「止め跳ね間違えないようにね、恋」


 理央が言うと、恋が頷いた。


 
「分かってる」

「編とつくりでイメージを膨らませて覚えるんだよ。木編に春で椿、椿は春に咲くだろ。」

「うーん……」


 
 理央が言った。


 
「私漢字は一応書けるけど、英語がチンプンカンプンなんだよね。」

「簡単だよ。構文さえ覚えてれば。もっとも、僕は生まれつき話すから、練習した事ないけど。簡単だってよく聞くよ。何なら教えるけど。」

「本当?。あっでもでも、樋山くんは私1人に教えるの嫌でしょう。やっぱり樋山くんには片思い相手が居なきゃね。恋!一緒に英語勉強しようよ。」

「英語は……」

「恋の英語はいつもは僕が見てる。恋は基本すらできてないけど。恋、いつも通り僕が教えるから、樋山には関わるなよ。駒井、悪いけど恋を誘わないで。」

「上野くんもめちゃくちゃ優秀だもんねえ。でもさ、たまには、みんなで勉強しても楽しくない?。そうだ!みんなで勉強会しようよ。」


 
 美風が顔を上げた。

 
 
「駒井、それナイスアイディア。新田さんと遊べるし。」

「勉強会?。僕には必要ないよ。通信教育のメソッドやるだけで充分。勉強は1人きりでやるものだろ。樋山に恋を関わらせたくない。僕はパス。」

「新田さんは?」

「うーん……勉強は……」

「行かないの。お前は。僕が見てやるので充分。」

「恋やろうよ。一緒にパー出来目指そうよ。恋が来るなら上野くんだって来るでしょ?」

「恋が行くならね」

「上野は来なくて良い。」



 そんなこんなで恋達は勉強会をする事になった。